「夫の不妊症が原因でも妻が痛い思いをするのはなぜ?」
原因
不妊症の原因は、4割が女性、4割が男性、2割が不明、と男女で差がない事が調査で明らかになっています。それでも不妊症の治療に通い、症状がないのに辛い医療を受けるのは女性であるのは何故なのでしょうか。
理由は3つ考えられます。一つ目は、男性不妊治療の分野が十分に成熟していないことです。
婦人科を受診したカップルが検査を受け、男性側に何らかの異常があると担当は泌尿器科にかわります。しかし男性不妊を診る専門医が少なすぎるのが現状です。
例えば精路が閉じてしまっている場合には手術対応になるのですが、難易度の高い手術で執刀できる医師は少なく待ち時間も長くなります。
したがってより治療実績の多い体外受精を選択されることが多いのです。体外受精では精巣から直接精子を取り出すのですが、精子が未熟であることも多くそれを補うために女性側が治療をすることになります。
二つ目は専門医が少ないこととも関係しますが、男性は働いて家計を養っているケースが多く治療に時間を割けないことです。
また、本人に自覚症状が無いのも治療を阻む要因になりがちです。
三つ目は、時間のかかる男性不妊の治療を待てない女性側の事情があります。
高齢になればなるほど卵子の質が低下し一層妊娠の可能性が低くなります。このためすぐに取りかかれる体外受精や顕微授精が選択されるのです。
対策
健康なカップルが2年たっても妊娠に至らない症状を不妊と呼んでいます。
男性不妊の治療を男性が受けて自然妊娠に結びつく可能性も高いのですが、医師の少なさと女性の妊娠可能な年齢に制限があることなどから、女性に負担のかかる体外受精や顕微授精が選択されがちです。
これを防ぐにはなるべく早めに若いうちに治療を開始することが肝心です。
それによって専門医を探す時間も取れますし、女性の年齢的なタイムリミットによるプレッシャーも少なくなります。
男性に原因のある不妊症の治療で女性にかかる負担は、薬の服用や毎日の注射などの他に、心理的な要素がとても大きいものです。
不妊症の治療を始めようと思うきっかけはカップルによって様々でしょう。
他の病気のように体に何か症状が出ているわけでもなく性生活も普通に送れていることがほとんどですから、なかなか踏み切れないでいるケースも多いのです。
特に初めての診察を女性だけで受けて検査でなんら異常がなかった場合に、男性に診察を受けてもらうのは難しいものです。
初めから二人で一緒に受診をするのをお勧めします。若いときから夫婦のあり方、家族のあり方についてよく話し合いお互いに協力し支え合える関係を築くことが不妊症の克服への第一歩です。
夫婦間でのスキンシップ
不妊症の原因が女性にあっても男性にあっても、二人にかかってくる心理的な重圧はかなり大きくなります。
不妊という症状そのものに対しても、女性が症状がないのに受けなければならない辛い治療についても、周囲からの理解を求めることは非常に難しく、特に男性不妊について男性の両親に説明することはとてもナイーブな一面を持っています。
女性が義理の両親の不用意な発言に傷つくことも多いにもかかわらず、女性が男性(両親からすれば息子)の不妊について告白することは稀です。この辺りの感情の行き違いやカップル間での気持ちの温度差が不妊症の治療の障害となることはよくあることです。
また、不妊治療では排卵の周期を計算して性交のタイミングを指導されることが多いのですが、その度に何かプレッシャーを感じてしまう人もいます。
これは不妊治療と子供を授かることだけが目標になってしまい、二人の関係を築き上げていくというもっと大切なことが見えなくなってしまうからです。
不妊治療を始めるとどうしても治療そのものが日常生活の中で大きなウエイトを占めてしまいます。
しかし2人の関係にとってそれは一部分にすぎずお互いを思いやる関係を作り、日常的なスキンシップこそが末長く関係を保つために大切だということを忘れないようにしなければいけません。